パンフレットに代えて

のびる第五回公演「散り散り星」
無事に終演いたしました。総視聴数は575回でした。たくさんのご観劇ありがとうございました!
今回は無観客生配信公演だったため当日パンフレットがありませんでした。ですので、こちらにパンフレットに代えたご挨拶文を載せさせていただきます。
本日は、のびる第五回公演「散り散り星」にご来場いただきまして誠にありがとうございます。

今回のテーマは恋愛です。オーソドックスです。わたしは恋愛が好きです。
恋愛感情はひとの心の中で一番果てしなく気味の悪い感情と思っています。
そして誰とも共感できない、私的なものです。
気味の悪い恋愛といえば、昔わたしが高校2年生だった頃に1ヶ月間ストーカーをされていたことを思い出します。
いつもわたしの地元の駅から高校の最寄り駅まで毎朝、後を尾けてくるおじさんがいました。
いまの自分だったら通報できるのですが、その頃は怖いし、もしかしたら感違いかもと思って何も出来ませんでした。でも確実に尾けられていました。
おじさんはいつもホームでは姿を隠し、わたしが電車に乗ったあと閉まる直前に同じ車両に乗ってきます。そしてわたしを見ると笑いかけます。
話しかけられることはなかったですが、とても怖かったです。ローファーで思い切り足を踏んでみたこともありましたが、まったく逃げませんでした。
そういったことが約1ヶ月間続きました。
ストーカーには、最後の日がはっきりと有りました。おじさんが嫌でせめてもと、毎朝違う時間の電車に乗っていたわたしはその日も遅刻して向かっていました。
最寄り駅から高校までの人気の少ない路地を歩いているといきなり後ろから腕を掴まれました。振り返るとそのひとでした。
「いつも尾けちゃってごめんね。でも君可愛いからさ」
とニコニコしながらおじさんは言いました。
わたしは、殺されるかもしれない、と感じました。
「じゃあやめればいいじゃないですか」
と答えた気がします。何故か丁寧に返してしまいました。そして手を振り払って走って学校に行きました。とても怖かった。
それがストーカーのおじさんと会った最後の日です。
その後も1年半、わたしは高校に通っていましたがほんとうにその日以来会いませんでした。

今回のお話を書いている途中、あのおじさんのことを思い出しました。
おじさんももしかしたら、誰にも理解されないけれど、純粋な片思いだったのかもしれません。
あのひとの中では、おじさんとわたしは恋愛をしていたのかもしれないと。
そんな訳ないだろ。
やはり恋愛は果てしなく気味の悪い感情です。

色々書きましたが、わたしは今作品の主軸、モトヤがとても好きです。
公演中、わたしはモトヤに恋をして終盤は泣きながら観ていました。自分で書いたくせに。
どうせわたしも、誰にも共感されないような恋をする、薄気味悪い人間のひとりなのです。

2020年3月28・29日
のびる 主宰
吉田のゆり

のびる

東京で活動しています、演劇団体のびるのサイトです。

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